あいつ何してる? VOL.53【平成18年卒 栗和田祥郎先輩】
同期の小林聡先輩からのバトンを受け、仙台からのご寄稿です。卒業からほぼ20年ぶりに、貴重なご寄稿をいただきました。歳月を重ねても変わらない立教愛と、これまでの歩みが詰まった一文です。お楽しみください。
(以下、栗和田先輩のご寄稿)
「栗和田は今頃なにしてる?」
「栗和田は今頃なにしてる?」
もし、大学時代の仲間がそんな話をしていたら、きっと誰かが「仙台で先生やってるよ」と答えてくれるのだと思います。
立教大学を卒業してから、気がつけば20年近くの時間が流れました。
2006年に立教大学を卒業した私は、現在、宮城県仙台市で公立中学校の教員をしています。今年で教員生活19年目になります。
大学時代の4年間、私は立教大学剣道部に在籍し、4年時にはキャプテンを務めました。
あれから20年近く。
今でも時々、あの道場のことを思い出します。
仲間と一緒に汗を流したこと。試合に負けて悔しかったこと。思うようにいかず、稽古に行くことさえ嫌になった日。くだらない話をして、みんなで笑った時間。
そして、そんな私の剣道部での時間の中で、今でも強く心に残っている言葉があります。
当時、剣道部のコーチをされていた榎本先輩からいただいた言葉です。
榎本先輩、すみません。
言葉そのものは、忘れてしまいました(笑)。
後から何とか思い出そうと思って、辞書を引いたこともあります。でも、うまく検索できませんでした。
不思議なものです。
言葉は忘れてしまったのに、その言葉が伝えようとしていたことは、20年近く経った今でも、はっきりと覚えています。
確か、こんな話でした。
榎本先輩自身も現役時代、思うような結果を残すことができなかった。
でも、コーチとして後輩たちに関わる中で、現役部員が全日本選手権に団体戦で出場することができたら、それは本当にうれしいことだ、と。
そして、先輩はこう続けました。
「それだけではない。もし全日本選手権に行くことができたら、それは立教大学剣道部がこれまでやってきたことが間違っていなかったということになる。これまで全日本選手権に行きたくても行けなかった先輩たちの努力も、証明することになるんじゃないか。だから、今の君たちの努力は君たちだけの努力じゃない。そう思ったほうが、絶対に力が出ると思う」
正確な言葉は覚えていません。
もしかしたら、榎本先輩自身は、こんな話をしたことすら覚えていないかもしれません。
でも、私には残りました。
当時の私は、「チームとして結果を出したい」「自分たちの代で全日本に団体で出場したい」「先輩たちができなかったことを、自分たちの代でやってやりたい」と、自分たちのことを中心に考えていたと思います。
もちろん、それは悪いことではありません。
勝ちたい。結果を出したい。自分たちの代で何かを残したい。
選手であれば、そう思うのは当然です。
でも、私たちの代は、残念ながら団体戦で全日本に出場することはできませんでした。
目標を達成することはできませんでした。
それでも、今振り返ってみると、私にとってあの4年間は、本当に充実した時間でした。
仲間と過ごした時間は、かけがえのないものとして残っています。
だから、当時の私はそれで十分だと思っていました。
ところが、卒業してから、少しずつ考え方が変わっていきました。
卒業後も、立教大学剣道部のことはずっと気になっていました。
ある時、ともに時間を過ごした後輩たちが関東大会を勝ち上がり、全日本に出場することを知りました。
「やったな」
そう思いました。
一緒に稽古をして、一緒に悩んで、一緒に頑張ってきた後輩たちです。
その活躍が嬉しくないはずがありません。
でも、正直に言えば、少し悔しい気持ちもありました。
結果を出したのは私たちではなく、後輩たちだったからです。
そんな時、後輩から電話がありました。
「先輩、やりました! おかげさまで全日本に出場することができました!」
その報告が、本当に嬉しかったんです。
もしかしたら、後輩の立場としての社交辞令だったのかもしれません。
それでも、私はその言葉が嬉しかった。
電話を切った後、ふと思いました。
「自分も、この全日本出場という結果に関われていたのかな」
そう思えた瞬間でした。
なんというか、「繋がり」を感じたんです。
そして、その時初めて、榎本先輩が言っていたことが、少しだけ分かった気がしました。
自分たちが現役だった時には結果を出せなかった。
でも、その時間が消えてなくなるわけではない。
自分たちが後輩たちと一緒に過ごした時間も、その後輩たちの努力のどこかにつながっている。
そして、その後輩たちがまた次の後輩たちにつないでいく。
剣道部という場所には、そういうものが積み重なっているのかもしれません。
その後も、女子剣道部が日本一になったこと、男子剣道部が関東大会で上位に入賞したこと。
そんな話を聞くたびに、
「立教、頑張ってるな」
と、今でも自分のことのように嬉しくなります。
そして、誇らしい気持ちになります。
自分がいた頃よりもずっと後の世代の選手たちなのに、不思議なものです。
でも、それでいいのだと思います。
大学剣道部を卒業し、教員として、今度は自分が中学生を指導する立場になってみると、榎本先輩が伝えてくれたことの意味が、もう少し分かるようになりました。
私は今、剣道部の生徒たちに、こんな話をすることがあります。
「辛いときや苦しいとき、自分のことだけを考えていたら、すぐに心が折れるよ。人間はそんなに強いものじゃない。だから、自分を応援してくれている人のことを思いなさい。家族でも、仲間でも、先生でもいい。自分が頑張っていることを喜んでくれる人を思いなさい」
そして、こう続けます。
「今の自分の努力は、自分だけの努力じゃない。みんなの活躍を喜んでくれる人がいる。その人たちの思いも背負っていると思えたら、自分の努力は自分だけのものじゃなくなるだろ。それが、踏ん張る力になるんだ」
20年近く前に、先輩からもらった言葉。
今度はそれを、私が子どもたちに伝えています。
表現は少し違うかもしれません。
でも、伝えたいことは、きっと同じです。
「人との繋がりが生む強さ」です。
そして、20年近く前に聞いた言葉が、今は自分の指導の中に確実に生きています。
剣道だけではなく、どんなスポーツでも同じなのだと思います。
技術や勝ち負けだけではなく、誰かから受け取ったものを、また次の誰かに渡していくことができる。
自分たちの代が残したものが、後輩たちの中で生きる。
そして、後輩たちが残したものが、そのまた後輩たちにつながっていく。
私たちの代は、在学中に大きな結果を残すことはできませんでした。
でも、後輩たちが私たちの4年間に意味を添えてくれた。
あの4年間を、後から輝かせてくれた。
私は今、そんなふうに思っています。
あのとき一緒に稽古した仲間。
悔しい思いをした試合。
苦しかった稽古。
くだらない話をして笑った時間。
そして、先輩方からもらった言葉。
その一つ一つが、今の自分につながっています。
現在、私は仙台市中体連剣道専門部の委員長、宮城県中体連剣道専門部の副委員長も務めています。今年で2年目になります。
大学を卒業するときには、まさか自分がここまで宮城県の中学校剣道に関わる立場になるとは思ってもいませんでした。
でも、今こうして剣道に関わり続けていると、立教大学剣道部で過ごした4年間が、自分の原点だったのだと改めて感じます。
そして、ふと思います。
大学時代の仲間たちも、それぞれの場所で、それぞれの人生を歩んでいることでしょう。
今もちょくちょく連絡をくれるマメな同期もいます。
ありがとう。
仕事を頑張っている人。
家庭を築いている人。
今も剣道を続けている人。
きっとみんな、あの頃とは違う場所で、それぞれ頑張っているはずです。
いつかまた、みんなで会いたい。
そして、「あの頃は大変だったな」「全然勝てなかったな」と、笑いながら話せたら最高だと思います。
その時には、榎本先輩にも会って、もう一度あの言葉を聞いてみたいです。
そして今度は、忘れないようにしっかり覚えておきたいと思います。
ただ、もし先輩が覚えていなかったとしても、それはそれでいいのかもしれません。
先輩が何気なくかけてくれた言葉を、私は20年近く経った今でも覚えている。
そして、その言葉を今度は自分が生徒たちに伝えている。
そうやって、人から人へ、剣道を通して受け継がれていくものがある。
誰かが何気なく残したものが、何年も何十年も経って、思いもよらない誰かの背中を押すことがある。
そう考えると、私たちがあの道場で過ごした4年間も、決して終わったものではないのだと思います。
勝った試合も、負けた試合も。
うまくいったことも、うまくいかなかったことも。
その時には意味が分からなかったことさえも。
いつか、誰かの中で意味を持つことがある。
それだけで、十分なのだと思います。
立教大学剣道部の現役の皆さん。
今は、稽古がきつい、試合で勝てない、思うようにいかない。そんな日もあると思います。
「なんでこんなに頑張っているのに、結果が出ないんだろう」と思うこともあるでしょう。
でも、皆さんの努力は、皆さんだけの努力ではありません。
皆さんを応援している人がいます。
皆さんの活躍を楽しみにしている人がいます。
そして、皆さんより前に立教の道場で汗を流し、思うような結果が出なくても剣道を続けてきた先輩たちがいます。
皆さんが今立っている場所には、そうしたたくさんの人たちの時間が積み重なっています。
だから、苦しいときには、少しだけ自分以外の誰かを思い出してみてください。
家族でもいい。
仲間でもいい。
先生でもいい。
先輩でもいい。
自分が頑張っていることを、きっと喜んでくれる誰かを。
その誰かを思い出すことが、もう一歩踏み出す力になるかもしれません。
私も仙台の地で、これからも剣道を続けていきます。
そして、今日もまた生徒たちに伝えます。
「君たちの努力は、君たちだけの努力じゃないよ」
2006年卒の「あいつ」は、今も仙台で剣道をしています。
あの頃とは違う道場で、違う仲間たちと、今度は教える側として。
それでも、心のどこかには、あの立教の道場があります。
あの頃、一緒に汗を流した仲間たちがいます。
そして、先輩方から受け取ったものがあります。
だから今日も、遠く仙台から思っています。
「立教、頑張ってるな」
そして、これからもずっと、立教大学剣道部のことを応援しています。
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